愛犬が「甲状腺機能低下症」と診断され、毎日の食事について悩んでいませんか?獣医師から処方された療法食を食べてくれなかったり、薬での治療と並行して、食事でも何かできることはないかと情報を探している飼い主さんも多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな飼い主さんの不安に寄り添い、犬の甲状腺機能低下症に配慮した手作りごはんの簡単レシピや、食事に関する基本的な知識を分かりやすく解説します。
手作りごはんが初めてという初心者の方でも安心して挑戦できる内容になっていますので、ぜひ最後まで読んで、愛犬の健康サポートに役立ててくださいね。
甲状腺機能低下症の犬のための簡単手作りごはんレシピ
甲状腺機能低下症の犬のごはんは、低脂肪・高タンパクを基本に、甲状腺ホルモンの材料となる栄養素を意識することが大切です。ここでは、料理が苦手な方でも簡単に作れる、美味しくて栄養満点なレシピを3つご紹介します。
鶏ささみと野菜の煮込みごはん
高タンパク・低脂肪の代表格である鶏ささみを使った、消化にも優しい基本のレシピです。
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材料(体重5kgの犬の約1食分)
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鶏ささみ:50g
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にんじん:15g
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しめじ:10g
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昆布(乾燥):少々
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ごはん(白米):30g
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作り方
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鶏ささみは筋を取り、野菜は細かく刻みます。昆布は水で戻してみじん切りにしておきます。
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鍋に全ての材料と、ひたひたになるくらいの水を入れ、火にかけます。
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沸騰したら弱火にし、アクを取りながら野菜が柔らかくなるまで10分ほど煮込みます。
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人肌程度に冷ましてから与えてください。
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鮭と豆腐の栄養スープごはん
良質なタンパク質とオメガ3脂肪酸が豊富な鮭を使った、栄養満点のスープごはんです。
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材料(体重5kgの犬の約1食分)
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生鮭:40g
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豆腐(絹ごし):20g
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ブロッコリー:15g
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ごはん(白米):30g
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作り方
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鮭は皮と骨を取り除き、一口大に切ります。ブロッコリーは細かく刻み、豆腐は軽く水切りしておきます。
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鍋に鮭、ブロッコリー、ごはん、そして具材が浸るくらいの水を入れ、火にかけます。
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鮭に火が通り、ブロッコリーが柔らかくなったら火を止め、豆腐を加えて軽く崩します。
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人肌程度に冷ましてから与えてください。
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豚レバーとかぼちゃのリゾット
鉄分やビタミンが豊富な豚レバーと、自然な甘みが食欲をそそるかぼちゃを使ったリゾットです。
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材料(体重5kgの犬の約1食分)
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豚レバー:20g
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かぼちゃ:20g
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オートミール:15g
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パセリ(みじん切り):少々
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作り方
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豚レバーは血抜きをして細かく刻みます。かぼちゃは種とワタを取り、皮をむいて小さく切ります。
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鍋にレバー、かぼちゃ、オートミールと、ひたひたの水を入れ、火にかけます。
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焦げ付かないように混ぜながら、かぼちゃが柔らかくなるまで煮込みます。
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火を止めてパセリを散らし、人肌程度に冷ましてから与えてください。
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甲状腺・副腎に悩む犬への手作りおやつの参考動画
コチラの動画も参考になります↓
甲状腺機能低下症の食事で与えて良い食材と避けるべき食材
手作りごはんにおいて最も重要なのが食材選びです。ここでは、甲状腺機能低下症の犬に積極的に与えたい食材と、注意が必要な食材をリストアップします。
積極的に与えたいヨウ素やチロシンを含む食材リスト
甲状腺ホルモンの生成をサポートする栄養素を含む食材を積極的に取り入れましょう。
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ヨウ素を多く含む食材: 甲状腺ホルモンの主原料です。昆布、わかめ、ひじきなどの海藻類に含まれます。ただし、与えすぎは逆に甲状腺に負担をかける可能性があるため、レシピで紹介したように少量加える程度にしましょう。
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チロシンを多く含む食材: 甲状腺ホルモンの材料となるアミノ酸です。鶏肉、鮭、かつお、卵、大豆製品、牛乳などに含まれます。
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その他のおすすめ食材:
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良質なタンパク質: 鶏むね肉、ささみ、たら、鮭など。
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抗酸化作用のある野菜: にんじん、かぼちゃ、パプリカ、トマトなど。
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オメガ3脂肪酸: いわしやサバなどの青魚、サーモンオイルなど。
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避けるべきゴイトロゲンを含むアブラナ科の野菜リスト
ゴイトロゲンとは、ヨウ素の吸収を阻害し、甲状腺ホルモンの生成に影響を与える可能性のある成分です。
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ゴイトロゲンを含む主な食材: キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、白菜、小松菜、大根、カブなど、アブラナ科の野菜に多く含まれます。
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与える際の注意点: これらの野菜は絶対に与えてはいけないわけではありません。ゴイトロゲンは加熱することでその働きが弱まるため、与える際は必ず茹でるか蒸すなど、十分に火を通すことが重要です。生で大量に与えることは避けましょう。
犬の手作りごはんの基本知識
手作りごはんを始める前に、知っておきたい基本的な知識をまとめました。
1日に必要な食事量の計算方法
犬が1日に必要とするエネルギー量(DER)の目安は、以下の式で計算できます。
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安静時エネルギー要求量(RER)を計算する
RER = 70 × (体重kg) ^ 0.75
※電卓で「体重×体重×体重=」と計算し、√(ルート)を2回押すと簡易的に計算できます。 -
犬の状態に合わせてDERを計算する
DER = RER × 係数-
避妊・去勢済みの成犬: 1.6
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未避妊・未去勢の成犬: 1.8
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肥満傾向の犬: 1.2~1.4
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活動的な犬: 2.0~5.0
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例えば、体重5kgの避妊済み成犬の場合、
RER = 70 × (5)^0.75 ≒ 234 kcal
DER = 234 × 1.6 ≒ 374 kcal
となります。
ただし、これはあくまで目安です。犬の年齢、犬種、体型、運動量によって必要なカロリーは変わるため、愛犬の体重や体型の変化を見ながら量を調整することが大切です。不安な場合は、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
初心者でも簡単な調理方法と冷凍保存のコツ
毎日手作りするのは大変ですが、ちょっとしたコツで負担を減らすことができます。
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調理方法: 基本は「煮る」「蒸す」です。油を使わず、食材の水分やだしで調理することで、ヘルシーに仕上がります。食材を細かく刻んだり、フードプロセッサーを使ったりすると、消化しやすくなり、シニア犬にもおすすめです。
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冷凍保存: 時間がある時にまとめて作り、1食分ずつ小分けにして冷凍保存すると非常に便利です。製氷皿やジッパー付きの保存袋などを活用しましょう。保存期間の目安は1〜2週間です。与える際は、電子レンジや湯煎で人肌程度に温めてください。
手作りごはんとドッグフードの栄養バランス
手作りごはんの最大のメリットは、飼い主さんが自ら安全な食材を選べることですが、栄養バランスを完璧に整えるのが難しいというデメリットもあります。
特に甲状腺機能低下症の犬にとっては、栄養管理が治療の一環となるため、栄養バランスは非常に重要です。いきなり完全な手作り食に切り替えるのではなく、まずはいつものドッグフードに少量トッピングすることから始めてみるのがおすすめです。
栄養バランスが心配な場合は、獣医師やペット栄養管理士などの専門家に相談したり、手作り食専用の栄養補助サプリメントを活用したりするのも良いでしょう。
犬の甲状腺機能低下症と手作りごはんに関するQ&A
飼い主さんからよく寄せられる質問にお答えします。
療法食との併用は可能か
必ずかかりつけの獣医師に相談してください。甲状腺機能低下症の療法食は、特定の栄養素が厳密に調整されています。自己判断で手作りごはんを加えたり、療法食をやめたりすると、治療の妨げになる可能性があります。
もし愛犬が療法食を食べてくれずに困っている場合は、その旨を獣医師に伝え、トッピングとして加えても良い食材や量について具体的な指示を仰ぎましょう。
手作りごはんで下痢や便秘になった場合の対処法
急に食事内容を変えると、胃腸が驚いて下痢や便秘をしてしまうことがあります。まずは、原因と思われる食材を一旦中止し、おかゆや消化の良いささみなど、お腹に優しいごはんを少量から与えてみましょう。
症状が数日続く場合や、元気・食欲がない場合は、他の病気が隠れている可能性もあるため、すぐに動物病院を受診してください。
さつまいもやかぼちゃの適切な与え方
さつまいもやかぼちゃは、自然な甘みがあり多くの犬が好む食材ですが、糖質が多いため与えすぎには注意が必要です。
与える際は、必ず加熱して、皮や種は取り除いてください。量は、主食としてではなく、ごはん全体の1割程度のトッピングに留めるか、おやつとして少量与えるのが適切です。
まとめ
今回は、犬の甲状腺機能低下症に配慮した手作りごはんのレシピや、食事に関する注意点について解説しました。
大切なのは、必ずかかりつけの獣医師と相談しながら進めることです。手作りごはんは、飼い主さんの愛情を形にして伝えられる素晴らしいコミュニケーションツールですが、無理なく、楽しく続けることが何よりも重要です。
この記事が、愛犬との健やかで楽しい毎日の一助となれば幸いです。
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